LPを外注するとき、発注書を作っているか。多くの場合、Slackに要件を箇条書きで送るだけ・Word数枚を渡すだけで進めてしまい、デザイン段階で「想定と違う」「KPIの話が出てこない」となる。事業会社のマーケを担当していると、この場面に何度も遭遇します。
結論から書きます。発注書には14項目を入れるのが現実解です。多すぎず少なすぎず、実務で本当に効く14項目を4つのグループに分けて整備すると、クリエイター側から良質な質問が返ってくるようになります。テンプレ全文はH2-7で配布します。
この記事は、LP発注を複数回行い、GA4 / BigQuery / AB testing で公開後の数字を見てきた事業会社マーケの立場から、発注書テンプレを設計しました。発注書の前段にあたる見積もり比較はLP制作の見積もりで聞くべき5つの質問もご参照ください。
私自身、過去のLP発注で、要件を口頭やSlackで伝えるだけで進めてしまい、進行中に「ここも追加で」と要件が膨らみ、結果として納期が後ろにずれた経験があります。発注書がないと、発注者側の頭の中にある要件を進行中に「思い出し追加」してしまう構造になりやすい、と感じています。
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結論:発注書には14項目を入れる
発注書は「発注者の準備物」ではなく、「クリエイターから良質な質問を引き出す装置」として設計するのが効きます。14項目を4グループに分けて並べると、見積もり依頼の段階で渡したときに、構造で語れるクリエイターと曖昧な提案しかできないクリエイターを発注者側が見分けられるようになります。
- グループA: 目的・KPI(4項目) — プロジェクト目的/KPI/計測ツール/予算
- グループB: ターゲット・訴求(3項目) — ターゲット定義/主訴求/競合分析
- グループC: クリエイティブ要件(3項目) — トーン&マナー/参考デザイン/必須要素
- グループD: 進行・契約(4項目) — 納期/修正対応/ディレクション/公開後対応
SERP上位の発注書記事は30項目を網羅型で並べる構成が多く、優先順位や根拠を示しません。本記事は「事業会社マーケで本当に効く項目だけ」に絞った立場で14項目に集約しています。
なぜ発注書テンプレが必要か:揉める3パターン
発注書なしで外注すると、典型的に3パターンで揉めます。事業会社マーケが何度も遭遇する型なので、先に共有します。
- 要件後出しで進行が止まる:デザイン中に「実はターゲットが違う」が判明し、ワイヤーごとやり直しになる
- 訴求方向のズレ:ペルソナと訴求軸の認識不一致でファーストビューが崩れ、再提案が必要になる
- KPI未定義で公開後に動けない:CVRが目標未満でも改善議論が始まらず、LPが「作りっぱなし」で終わる
発注書は最後に作るものではなく、見積もり依頼の段階で渡すのが効きます。LP制作の見積もりで聞くべき5つの質問でクリエイターを見極めたあと、本記事の発注書で要件を明示する2ステップで進行が透明になります。
私が見てきた範囲では、発注書なしで進めた案件ほど、進行中に「そういえばここも」という要件追加が起きやすい傾向があります。書面で要件を先に固めるだけで、要件追加のタイミングを発注書改訂という明示的なプロセスに変えられる、と感じています。
グループA:目的・KPI項目(4項目)
外注先と「成果の定義」を揃えるための4項目です。ここが揃わないままデザインに入ると、後でほぼ手戻りが発生します。
A-1. プロジェクト目的
事業背景・LPの役割・解決したい段階の課題を3行で書きます。「広告流入のCV受け皿」「商談前の比較検討フェーズ向け」など、ファネル上の位置付けまで共有するとワイヤー設計の精度が変わります。
A-2. KPI(CVR目標値、CVの定義、計測タイミング)
初期目標CVRと3ヶ月後の改善目標をレンジで提示し、CVの定義(資料DL/無料トライアル登録/商談予約)を1つに絞ります。計測タイミング(クリック直後/確認画面到達/メール認証完了)も明記します。CVRを「測れる前提で」発注する姿勢が、公開後の改善議論を成立させます。
A-3. 計測ツール(GA4、BigQuery、ヒートマップ、AB test)
GA4のイベント設計、BigQuery export の有無、ヒートマップ(Microsoft Clarity 等)、AB testing ツールを発注書段階で共有します。「計測実装込みで対応可能か」を聞く判断軸になり、対応可能なら制作後の改善も一緒に走れます。計測項目を発注書に書く文化を持つと納品物の質が底上げされる、というのが現場感覚です。
A-4. 予算(制作費の範囲、追加発生時の上限)
制作費レンジと追加発生時の上限を最初に開示します。値切り交渉ではなく「どこに重みを置くか」をクリエイターと共有する目的です。デザイン・コーディング・ディレクション・公開後対応の4内訳で粒度を揃えます。
公開後30日の運用設計はLP公開後30日でやる5つの計測設定で扱います。
グループB:ターゲット・訴求項目(3項目)
LPで「誰に・何を・なぜ」を揃える3項目です。デザイン以前の前提条件にあたります。
B-1. ターゲット定義(ペルソナ、課題、利用シナリオ)
業種・規模・役職の3つを揃え、現在の課題と利用シナリオをセットで書きます。「BtoB SaaSの従業員50-200名、マーケ責任者、MQL不足」のように具体性を持たせると、訴求案が一気に絞れます。
B-2. 主訴求(提供価値、差別化ポイント、強み)
提供価値の優先順位(コスト削減型/工数削減型/成果向上型)を1つに絞り、差別化ポイント・強みを3つ、前面に出す順番も共有します。並列で書くとクリエイター側の解釈が分かれて手戻りが増えます。
B-3. 競合分析(直接競合・間接競合の参考LP 2-3例)
直接競合のLPを2例、間接競合のLPを1例、URLで共有します。「真似する点」と「外す点」を要素単位でセットにすると、構成議論の解像度が上がります。
過去の発注経験では、ペルソナ詳細を1ページ書いた発注と、業種だけ書いた発注で、クリエイターから返ってくる初回提案の質に明確な差がありました。ペルソナ定義の解像度は、そのまま提案物の解像度に反映される、と感じています。
グループC:クリエイティブ要件(3項目)
デザイン段階の前提を共有する3項目です。「センス」での議論を避け、構造で語る土台になります。
C-1. トーン&マナー(業界、想定する印象、避けたい表現)
業界の慣例(BtoB系/SaaS系/D2C系)、想定する印象(誠実・先進的・親しみやすい)、避けたい表現(過剰訴求・カジュアルすぎ)を箇条書きで揃えます。
C-2. 参考デザイン(好きなLP 2-3例 + その理由)
好きなLPを2-3本URLで提示し、「ファーストビューの構造が良い」「CTAエリアの配置が好み」など要素単位の理由を添えます。理由が言語化できるとトーンを再現しやすくなります。
C-3. 必須要素(ロゴ、コーポレートカラー、フォント、CTA文言)
ロゴデータ・コーポレートカラーのHEX・指定フォント・CTA文言案を渡します。BtoB SaaSなら導入実績ロゴ・セキュリティバッジ、D2Cなら商品写真の点数も合わせて指定します。
グループD:進行・契約項目(4項目)
進行と契約の境界線を明示する4項目です。発注書段階で固めると、後からの追加請求や納期交渉が透明になります。
D-1. 納期(公開日、リリース計画との関係)
公開日とリリース計画(広告配信・展示会・プレス)の関係、マイルストーン(要件確定/ワイヤー/デザイン/コーディング/公開)の日付を書きます。
D-2. 修正対応(修正回数、1回の定義、上限後の単価)
修正回数の上限、1回のカウント方法(軽微修正は無制限/構造変更は別)、上限超過後の単価を数値で明記します。「常識の範囲」型の文言は揉めた時に発注者側が不利になりやすいので避けます。
D-3. ディレクション(主導権、レビューフロー、決裁者)
誰がディレクションの主導権を持つか、レビューフローはどう回すか、最終決裁者は誰かを書面化します。決裁者が複数いる場合は、優先順位も明示するのが安全です。
D-4. 公開後対応(AB test、改善依頼の取り扱い、計測協力)
公開後のAB test 1本を料金内オプションに含めるか、改善依頼の単価、計測協力(GA4の引き継ぎ・BigQueryのアクセス権付与)の範囲を発注書段階で固めます。ここまで書ける発注者は少数派ですが、書けると長期パートナーになれるクリエイターを引き寄せやすい、と感じています。
過去のLP発注で修正回数の上限超過に悩んだ経験から、その後の発注書では「修正1回の定義」と「上限超過後の単価」を毎回項目化するようにしました。書面で線が引かれた発注では、追加請求で揉めることがほぼなくなり、契約項目の整備が外注品質に直結すると実感しています。
14項目テンプレ全文(コピペ可形式)
以下が14項目の発注書テンプレ全文です。装飾はあえて外してあります。コピーして自社の発注書に貼り付け、案件に応じてカスタマイズしてください。
【LP制作 発注書テンプレート】
■ Group A: 目的・KPI
A-1. プロジェクト目的:
A-2. KPI(CVR目標と計測手法):
A-3. 計測ツール:
A-4. 予算:
■ Group B: ターゲット・訴求
B-1. ターゲット定義:
B-2. 主訴求:
B-3. 競合分析:
■ Group C: クリエイティブ要件
C-1. トーン&マナー:
C-2. 参考デザイン:
C-3. 必須要素:
■ Group D: 進行・契約
D-1. 納期:
D-2. 修正対応:
D-3. ディレクション:
D-4. 公開後対応:
使い方は3点。①最初から全項目を埋めなくて構いません(次のH2-8で段階的整備の手順を示します)。②項目順は変えずグループAから書くとKPI起点の議論になります。③渡したあとに返ってくる質問の質で、クリエイターの実力が見えます。
14項目の3層分類:必須・強く推奨・任意
14項目すべてを必須にすると整備の手が止まります。実務では3層に分けて、必須から段階的に整備するのが現実的です。
必須(3項目):これがないと発注が成立しない
- A-1 プロジェクト目的:LPの役割が見えないと、提案がブレる
- A-2 KPI(CVR目標と計測手法):成果定義がないと、納品物が「作りっぱなし」で終わる
- D-2 修正対応:追加請求の境界線がないと、進行で揉める
強く推奨(7項目):整備すれば外注品質が大きく向上
- A-3 計測ツール:GA4実装込みのクリエイターを引き寄せられる
- B-1 ターゲット定義:訴求案が一気に絞れる
- B-2 主訴求:クリエイター側の解釈ブレが減る
- C-3 必須要素:デザイン段階での確認回数が減る
- D-1 納期:マイルストーンが共有され進行が透明になる
- D-3 ディレクション:レビューフローが固まり決裁が早くなる
- D-4 公開後対応:長期パートナーを選びやすくなる
任意(4項目):案件規模・性質によって判断
- A-4 予算:発注前開示 or 見積もり後交渉は案件次第
- B-3 競合分析:競合が明確な業界では推奨
- C-1 トーン&マナー:BtoB SaaSは「カチッと」で大体揃う
- C-2 参考デザイン:あれば質が上がるが、なくても進行可能
計測関連(A-2 / A-3 / D-4)が「必須・強く推奨」に集中している点が、本記事のフレームの核です。発注書段階で計測を可視化すると、公開後の改善議論が自然に始まります。
14項目の発注書テンプレを運用するようになってから、見積もり比較の精度が大きく上がり、クリエイター選定の手戻りも減りました。テンプレで先に要件を可視化することは、発注者側の判断にも、クリエイター側の見積もりにも、同じだけの恩恵を生むと感じています。
よくある質問
Q. 発注書、RFP、要件定義書はどう違う?
厳密な業界定義はバラバラですが、実務では「クリエイターに渡して要件を共有する1ドキュメント」として一体運用するのが現実的です。本記事の14項目は、RFP・要件定義書の中身を発注書フォーマットに統合した位置付けで設計しています。
Q. 14項目すべて埋めないと依頼できない?
埋まらなくて構いません。H2-8で示した必須3項目(A-1 / A-2 / D-2)からまず整備するのが現実解です。強く推奨7項目を順に追加していけば、3案件目くらいから14項目が自然に揃うはずです。空欄を残してクリエイターと話すこと自体が、発注書を「対話の起点」として機能させるコツです。
Q. BtoB SaaSとD2Cで発注書の中身は変わる?
骨格(14項目)は変わりません。中身が変わるのはB-1(BtoBは役職/D2Cは年代)、C-3(BtoBは導入実績ロゴ/D2Cは商品写真点数)、A-2 計測タイミング(BtoBは商談化率/D2Cは購入完了)の3点です。業種ごとに記入例を別で用意しておくのが効率的です。
まとめ:14項目で、発注書を「対話の起点」にする
14項目を再掲します。グループA 目的・KPI、B ターゲット・訴求、C クリエイティブ要件、D 進行・契約。必須3項目(A-1 / A-2 / D-2)から整備し、強く推奨7項目を順に追加していくのが現実的です。発注書は「発注者の準備物」ではなく「クリエイターから良質な質問を引き出す装置」として運用すると、外注品質が変わります。
発注書で計測項目を入れた次のステップはLP公開後30日でやる5つの計測設定に進みます。発注の前段にあたる外注先選びはLP制作の外注先選びもご参照ください。
本記事は2026年5月時点の情報です。料金・サービス内容は変更される可能性があるため、最終的な発注時には公式ページの最新情報をご確認ください。
2026-05-11 更新